経済的な事情により在学中の学費や生活費を借り入れる「奨学金」ですが、就職後に月々の返済額が大きな負担になっているケースも珍しくありません。
特に、新卒入社直後から一定の収入水準に至るまでは月給が少ないため、奨学金の返済のせいで生活がギリギリといった方も多いでしょう。
この記事では、奨学金の支払いを滞納した場合に起こる遅延損害金や差し押さえのリスクについて解説します。
奨学金の遅延損害金にご注意
奨学金の支払いを滞納すると、一定期間から延滞料、つまり遅延損害金が発生します。
奨学金の返済には一定の猶予が設けられており、事前に申し出れば返済期限の延長や毎月の返済額の減額に応じてもらえる可能性があります。
そのまま連絡を取らず滞納を続けると遅延損害金の発生によりさらに返済が困難になってしまうかもしれません。
滞納のリスクは遅延損害金だけでなく、信用機関のブラックリスト入りや最終的には裁判による差し押さえも存在します。
これらは今後の生活にとっても大きなハンデになり得るため、発生する前になんらかの対処を講じる必要があります。
奨学金を滞納した場合の流れ
ここからは、奨学金を滞納した場合の流れを、起こるリスクごとに解説します。なお、今回紹介するケースは、返済に利子がある第二種奨学金の場合です。
奨学金返済の引き落としが2回連続でできなかった場合、以降は延滞金が追加されます。
奨学金の返済は原則として口座振替のみで、途中でのコンビニ・銀行振り込みといった方法に対応していません。
当月の口座振替で引き落とせなかった場合は、翌月にまとめて引き落としされます。そのため、奨学金は滞納分を途中で支払って延滞金を抑えるという対策ができません。
延滞金の金利は令和2年以降、第一種奨学金で1.5%、第二種奨学金で3%程度です。一定期間より前から発生した分の支払いは、さらに高い金利が適用されます。
この金利は滞納分に対して年利でかかります。元金が多いほど遅延損害金の金額も大きくなるため、2ヶ月以上の滞納は極力避けなければなりません。
奨学金の返済が行われなかった際、まずは電話にて口座引き落としができなかった旨の電話がかかってきます。1回目では通知のみの電話で、2回目以降は督促の電話です。
また、電話の後に「奨学金返還の振替不能通知」が自宅に届き、信用情報機関への登録についてSMSが送信されます。通知書にて来月の引き落とし分や延滞金も含めた金額が表示されているため、必ず口座には十分なお金を入金しておきましょう。
このとき注意したいのが、光熱費や家賃といった支払いも同一口座で行っているケースです。奨学金の引き落としは月末あたりに行われることがほとんどで、状況によっては家賃や光熱費の引き落としが先に行われる場合があります。
奨学金分のお金を入金していても他の支払いで口座残高が不足すると、振替不能としてさらに翌月に返済が繰り越されるのです。2回目以降からは延滞金が加算されるため、振替不能を起こしたとしても1回に留めておきましょう。
お金が足りない場合は、2回目の引き落としが行われる前に奨学金相談センターへ連絡するのをおすすめします。
奨学金の契約には保証人が必要で、大半の場合は両親に設定されているのがほとんどです。
振替不能1回目までなら保証人に知られることはありませんが、2回目以降は督促の電話と通知が保証人のところにもいきます。そのため、奨学金の滞納を両親にバレず済ませることは、ほぼ不可能といってよいでしょう。
また、奨学金の滞納は最終的に差し押さえに発展しますが、このとき保証人も無関係ではありません。本人が返済できない分は保証人が立て替えなければならないため、長期滞納は両親にも迷惑がかかります。
振替不能が4回に達すると、債権回収会社からの催告が始まりいわゆる「信用情報に傷がつく」といった状態になります。
3回目の振替不能通知は実質上の最終通告にあたり、返済額4ヶ月分に加えて延滞金を口座に用意しておかなければいけません。それでも返済に応じない場合は保証人に支払いの通知が届く場合もあります。
債権回収会社が動き出すと差し押さえの一歩手前であるため、返済が難しい場合は早急に奨学金相談センターへ連絡しましょう。
奨学金には返済期間の猶予や返済額を減額する救済制度もありますが、滞納中の申請には厳しい条件が課されます。なんらかの制度を利用するなら、滞納を起こす前に行動しましょう。
奨学金の返済を3ヶ月以上滞納すると、金融事故と認定され信用機関に事故情報が掲載される、通称「ブラックリスト」への登録が行われます。
ブラックリストに入るとクレジットカードの発行や各種ローン契約や分割払いを利用するのが困難なため、今後の生活に大きな支障をきたすでしょう。
事故情報の登録は本人に通知が届かないため、確認するには信用機関に対して開示請求を行う必要があります。奨学金の場合はJBA(一般社団法人全国銀行協会)と呼ばれる信用機関に加盟しているため、JBAの公式ホームページの手順に従って信用情報を確認しましょう。
再三の督促にも関わらず返済に応じず、かつ支払能力がある場合は、残りの返済額も含めて一括請求される可能性があります。
本来、奨学金やローンといった長期にわたる分割払いには「期限の利益」という仕組みが存在し、貸主側は一方的な理由で残金の一括請求ができません。
しかし、長期滞納が起きると貸主側は返済期日が到来していない分を含めた全額を一括して請求できるのです。これを「期限の利益の喪失」と呼びます。
例えば、元金300万円分のローン返済で毎月2万円ずつ返している場合、長期滞納を起こすと残りの元金分を一括して支払わなければなりません。
期限の利益の喪失による一括請求が起きると、もう一度分割払いにしてもらうことは困難です。
支払えない分は保証人が支払うか、財産の差し押さえによって充当されます。それでも足りない場合は、債務整理をするほかないでしょう。
毎月数万円ずつの返済でも、長期滞納すると一気に返済額が跳ね上がります。自己破産のリスクも高まるため、早期に対処するのが最善策です。
返済の長期滞納は、最終的に家財の押収・換価によって返済分に充当されます。
差し押さえでは給料の天引き・不動産の押収・動産の押収など、お金に換えられる資産をほとんど徴収され、生活に最低限必要な分しか残りません。
信用情報とは、金融サービスの利用や支払い状況を参照するために利用する個人情報です。前述した事故情報も信用情報の1つで、その他にはクレジットカード情報・契約中の返済内容・利用履歴といった情報も保管されています。
信用情報はクレジットカードの発行や賃貸契約といった審査が必要な契約で参照されます。情報に誤りがないか・ブラックリスト登録されていないか・支払い能力はあるかといった情報を見て、審査の合否を決めるのです。
世間一般で「ブラックリストに登録されるとローン審査に落ちる」と言われているのはこのことです。
信用情報に傷がつくと起こりうること
ここからは、信用情報に傷がつく、つまりブラックリストに登録されることで起こり得るデメリットについて解説します。
信用情報は、生活における支払いや借り入れといったお金にまつわるあらゆる契約で使われるデータです。一度傷がつくと一定期間は金銭面で不自由を被るため、極力避けなければなりません。
クレジットカードの発行には審査があります。ブラックリストに登録されていると「支払い能力がない」「滞納する危険がある」として、発行の審査に落ちやすくなります。
ただし、審査基準はカード会社によって差があるため、1社で落ちたからといって他のカード会社も同様とは限りません。
どうしても作りたい方は、複数社に応募してみるとよいでしょう。
事故情報はマイカーローンや住宅ローンといったローン契約に大きく響きます。
ローンは金額の大きな買い物に利用されるケースがほとんどなため、審査基準も厳しめです。特に、購入金額が1000万円以上はする住宅ローンだと、審査に通るのはほとんど不可能といってよいでしょう。
ブラックリストに登録されると、一定水準の収入があったとしても審査に落ちる場合があります。どうしても契約しなければならない場合は、親から購入資金を援助してもらう・保証人を立てる・頭金を用意するといった対策が必要です。
分割払いは借入契約の1種です。そのため、信用情報に傷がついた方だと利用できない可能性があります。
代表的な契約でいえば、携帯電話やスマートフォンの分割購入です。携帯会社の契約時に本体の購入代金を分割払いにする場合、審査があります。信用情報に傷があると審査に落ちやすいため、分割払いを利用できないのです。
ただし、携帯自体を購入できないわけではなく、一括購入であれば問題なく契約できます。また、10万円以下の商品は「少額店頭販売品」と呼ばれ、分割購入時に審査がありません。格安のスマートフォンならば、分割払いに応じてもらえる可能性があります。
財産の差押さえに発展すると起こりうること
ここからは、財産の差押えに発展するまでに生じるデメリットについて解説します。
奨学金の滞納は遅延損害金やブラックリスト登録などデメリットの大きい行為ですが、金銭的なリスクだけではありません。長期滞納では以下のデメリットがある点にもご注意ください。
奨学金を長期滞納すると財産を差し押さえられますが、事前に本人の持つ財産を特定するための「財産調査」が実施されます。
財産調査では口座残高や勤務先の在籍確認が行われるため、本人が隠していたとしても、いずれは会社にバレてしまうのです。
強制執行による財産の差し押さえでは、必要最低限の家財を残してほとんどの財産が押収されます。
自家用車も、通勤や生活圏の観点から「ないと生活に支障をきたす」と認められない限り、差し押さえの対象です。
差し押さえは財産の喪失だけでなく、家族の信頼も失ってしまいます。特に、生計を共にするパートナーや保証人である両親には、多大な損害を与えてしまうでしょう。
大切な思い出の品や自宅までも失うため、債務が終わったとしても禍根は残り続けてしまうのです。
現金を除いた財産、つまり家電製品や車といった動産や不動産は、押収後にオークション形式の公売か第三債務者への交付要求によって売却されます。
公売には「高価有利な売却」の原則によって、できるだけ価値を最大化する努力を義務付けられていますが、実際には本来の価値よりも安く買い叩かれる場合が多いようです。
例えば、不動産の競売は価値の6割程度ともいわれています。
奨学金を返せず滞納してしまう原因
ここからは、奨学金の滞納が発生してしまう原因について解説します。
滞納を何度も繰り返す場合、以下の原因に心当たりがないか確認しましょう。
新卒の頃は収入が低く、奨学金の返済に充てる分のお金を捻出するのが困難です。
学生の頃は、親の支援や学校サイドの支援によって収入が少なくても生活できましたが、社会人は費用の全てを自分で賄わなくてはなりません。
また、ご家庭によってはこちらから両親に仕送りをしたり、介護が必要な家族をサポートしたりする必要もあるでしょう。
少ない収入と奨学金の返済が重なると、周りに使うだけのお金を捻出できません。昇給で給与が安定するまでは、滞納を繰り返してしまう可能性があります。
ひとり暮らしではなにかと支出が重なります。特に、身の丈に合っていない賃料の物件に住むと、家賃の負担が生活を圧迫してしまうでしょう。
また、車を所有しているとガソリン代や駐車場代など、維持費がかかるものです。新生活にかかる生活費を見誤ると、奨学金の返済に充てる分のお金は捻出できない可能性があります。
新社会人で毎月まとまったお金が入ると、つい無駄遣いをしてしまうものです。
収入と支出のバランスを考えず闇雲にお金を使ってしまうと、返済分や家賃といった固定費の引き落とし分のお金が残りません。
固定費の支払いの多くは月末に引き落とされるため、お金は事前に配分しておく必要があります。
奨学金を返せないときの対処法
ここからは、奨学金の返済が難しい場合の対処法を解説します。
奨学金には支払いの猶予や減額など返済スケジュールを調整する制度が存在するため、返済が難しい場合は各制度の利用を検討しましょう。
奨学金には「返還期限猶予」と呼ばれる制度があり、奨学金の支払いが困難な場合に、返還期限に最大10年の空白期間を設けられます。延長期間中の利息は免除され、遅延損害金もかかりません。
返還期限猶予には「一般猶予」と「猶予年限特例又は所得連動返還型無利子奨学金の返還期限猶予」の2種類があり、それぞれ承認要件が異なります。
一般猶予の承認要件は、主に以下の通りです。
- 現在返還が困難であること
- 税込み年収が300万円以下(給与所得者以外は200万円以下)であること
一方、猶予年限特例又は所得連動返還型無利子奨学金の返還期限猶予の承認要件は、以下の通りです。
- 第一種奨学金のうち「猶予年限特例」「所得連動返還型無利子奨学金」を貸与された者
- 新卒または経済困難で低収入もしくは無収入であること
返還期限猶予を承認してもらう条件は、原則として「経済的に困窮していて返済が困難な状態にある」「収入が一定水準を下回っている」ことです。
ただし、承認には現時点で滞納していない必要があります。
もし滞納状態でも申請する場合は、以下の条件をクリアしなければなりません。
- 返済できないやむを得ない事情があり、通常の返還期限猶予を申請できない
- 申請事由を「経済困難」とし、年収が税込みで130万円〜300万円以下であること
上記を「延滞据置猶予」と呼び、現在滞納中の場合はこちらの制度を申請しましょう。
どうしても支払いが難しい場合は、遅延損害金が発生する前に両親へ相談するのをおすすめします。
遅延損害金は振替不能の2回目から発生しますが、このとき同時に保証人へ電話や通知が届きます。
奨学金の連帯保証人は両親に設定するケースが大半なため、バレずにやり過ごすことは実質的に不可能といってよいでしょう。
支払いを忘れているわけではなく支払いが困難な場合は、一度お金を立て替えてもらうなど、なんらかの対策を取ってもらいましょう。
まとめ
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