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社用車を導入する時に一括購入する方法ではなく、車をカーリース契約して使用している会社も多くなっています。
会社としてまとまった車の台数を保有・管理することは、「税金」「車検」「メンテナンス」など、購入してからも維持や管理に社員の労力を費やすことになります。
それに対して、カーリース契約で車を利用すると毎月のリース料の支払いだけで車を維持管理できます。そのため、カーリースの需要が多くなっているのかもしれません。
今回は、社用車として一括購入とカーリース契約がどのような点で異なり、節税につながるかを「減価償却」の視点も含めて詳しく解説していきます。
新車を一括購入する時は減価償却が必要
社用車として新車購入をした時には、固定資産とみなされ減価償却することになります。
例えば、一括現金支払いの時は現金の減少となるため、資金面で余裕がある必要があります。それに比べて車をカーリースで契約する際には、毎月のリース料は費用として計上することが可能です。
カーリース契約は3年や5年など決められた年数で契約するので、社用車の入れ替えについてもスムーズに対処することができます。
まずは、新車を一括購入した時の減価償却の考え方について、これから詳しく解説していきましょう。
減価償却の考え方とは?
自動車や機械など金額の高い買い物をした場合、全額をその年の費用として計上できると考える方もいるかもしれません。しかし、一度に経費として落とせる金額は1つ又は1組が100,000円未満の資産までとなります。
ただし、個人事業主や中小企業で青色申告をする場合、1つ又は1組が300,000円未満の資産については、購入や使用開始した年度に一括で経費計上を行うことができる特例があります。
気をつけなければいけない点は、購入金額の合計が12ヶ月で300万円までになっているため、これを超えると適用されないので注意が必要です。
そのため、自動車の経費計上は「利用する期間に応じて」費用を計上するのがポイントです。これが減価償却になります。
それでは減価償却の方法を2点、次からお伝えしていきます。
減価償却の方法1つ目は「定額法」です。この定額法は、資産の耐用年数になるまで毎年同じ金額を費用計上する方法です。
例えば、100万円の資産を5年で償却する時には、毎年200,000円ずつ費用を計上することになります。
経費の計上が容易に行うことができる、毎年同じ金額になるので経営面でも安定して減価償却をすることができるため、個人事業主が使用していることが比較的多い方法です。
確定申告の時の手間を考えると、有効的な方法と言えます。
減価償却の方法2つ目は「定率法」です。この定率法は、資産の耐用年数になるまで毎年同じ減価償却率で費用を計上する方法です。
例えば100万円の資産を5年で償却する時には、5年の償却率を50%として計算してみると、1年目は500,000円、2年目は250,000円、3年目は125,000円になります。
定額法と定率法で比較すると、最初の2年間は定率法が経費計上が高くなります。
因みに、定額法と定率法は経費計上する時に、どちらかを選択する必要があります。途中で変更することができないので注意が必要です。
先程からお伝えしている通り、社用車を購入した時には固定資産になります。この固定資産は、耐用年数が決められており、2年以上であれば減価償却を行うことが可能です。
耐用年数の期間内で価値が減少した分として経費に計上します。
例えば車の耐用年数と減価償却率は以下のようになります。
- 普通自動車・・耐用年数6年、減価償却率:0.417
- 軽自動車・・・耐用年数4年、減価償却率:0.625
- 貨物自動車・・耐用年数5年、減価償却率:0.500
※上記の減価償却率は、平成19年4月以降に取得した固定資産に適用される数値になります。
車をリース契約するメリットとは?
社用車を購入する際には、減価償却が必要になりますが、車をカーリース契約すると経費計上はどのようになるのか気になるかもしれません。
カーリース契約は、契約期間が3年や5年の期間について全額経費として計上できることがメリットです。
その他にもカーリース契約のメリットは存在します。知っておくことで購入とカーリースについて比較・検討も可能になるでしょう。
次からはカーリース契約するメリットについて解説していきます。
カーリース契約するメリットの1つ目は、毎月定額で費用化できることです。これは経理処理を行う時に最も簡単な方法であり、節税効果が高いことが挙げられます。
それは、使用している会社の毎月支払うリース料金を全額経費にすることが可能だからです。
カーリース契約している車は、リース会社が所有することになり、固定資産の計上をする必要がありません。言い換えれば、カーリース契約して利用することは、税金がかかる固定資産にはならず、車の所有に必要な各種税金についても、基本的にカーリース会社が対応します。
その年に支払ったリース料金を全額経費として計上することが可能なので、節税効果を図ることができます。
カーリース契約するメリットの2つ目は、車を入れ替えすることが簡単であることです。
カーリース契約すると、契約期間が3年、5年などのように決まってきます。リース契約が満了になった時に再度カーリース契約をする時は、次の車と入れ替えをするだけで済みます。管理する担当者についても、負担や手間をかけずに行えることはメリットです。
また、固定資産の場合であれば、売却する際に、減価償却後の残存価格と売却した価格に応じて「車両運搬具売却損益」を計上することになります。しかし、カーリース契約では資産となっていないので、そこに手間をかける必要もありません。
カーリース契約するメリットの3つ目は、メンテナンスの手間を省くことができることです。
車は維持費がかかるものです。「毎年の自動車税」「車検時の自賠責保険や自動車重量税の納入」「車を安心して使えるように定期的な整備・点検費用」などです。それに加えて、日程調整や各種手配も職場の担当がすることによる負担も増えるでしょう。
しかし、カーリース契約すれば、期日管理・各種手配もカーリース会社が行います。つまり、車両管理にかかる手間や負担が抑えられるということです。
カーリース契約するメリットの4つ目は、車の管理が容易になることです。
車を購入する時には、ディーラーとのやり取りをしたり、車検や法定点検を行う時には整備工場に手配したり、税金などの諸手続きも行わなければなりません。
もし車を複数台所有している状態であれば、購入時期やコンディションも異なってきますので、1台ごとに個別管理が必要になってきます。それを考えると業務負担も増えて、対応が大変になってしまうこともあるでしょう。
しかし、カーリース契約をすると、車検時期やオイル交換の時期についても、一括でカーリース会社が管理を行ってくれます。そのため、会社内の人件費削減につながることも期待できます。
カーリース契約するメリットの5つ目は、税金や保険も含めた経費計上ができることです。
例えば、車検を行う時に勘定科目として自動車重量税は「租税公課」、自賠責保険は「保険料」、基本点検技術料は「車両費」などのように経理処理をするためには、細かく費用を計上していくことが必須となります。
しかし、カーリース契約すると月々の費用に税金や保険料も含まれているので、経費を計上するだけです。そのため、経理処理の負担は軽減されます。
金額が定額であることは、仮に複数カーリース契約した車を持っていたとしても、金額は明確で理解しやすいこともメリットと言えるでしょう。
カーリース契約するときの注意点
個人事業主が車をリース契約するとカーリースにかかる費用については、全て経費計上ができるため、節税につながるということは先程お伝えした通りです。車両の管理も楽に行えるのでメリットも多数あります。
しかし、注意点もあります。次からは、車をリース契約する時の注意点について詳しく解説していきましょう。
注意点の1つ目として、カーリース契約は中途解約が原則できないということです。
カーリース契約はリース契約満了の際に、どれだけの車の価値があるかを事前に見積もっています。そのことを残存価格(残価)といいます。それを基にして月額費用を決めているので、途中解約することが原則できません。
カーリースしている車が大きな事故を起こしてしまった時に、自走不能で修理も困難な場合は、解約することも考えられます。そういった場合は、一般的に多額の解約金や違約金を一括で支払う必要があります。
そのため、契約書を確認して、どのような内容になっているか事前に確認しておきましょう。
注意点の2つ目は、走行距離の制限があることです。
走行距離が多くなってしまうと、車の価値は下がります。そのため、カーリース会社は月の走行距離の上限を決めていることが一般的です。
例えば、物販を輸送することが多く、走行距離の増減が多い状態であると、契約終了後に追加金額を精算する可能性があります。
ある程度、走行距離が決まっているの状況であれば問題ありませんが、変動が多い場合には注意が必要です。
カーリース会社では、走行距離についてある程度幅をもたせる契約条件をつけているところもあります。使用状況に応じて、契約する時に取り入れると良いでしょう。
注意点の3つ目は、リース契約する時には審査があることです。
会社であれば「経営状況」「事業年数」「事業内容」「債務残高」「債務整理歴」がチェックされます。健全に会社運営が行われているか、判断されるということです。
個人事業主についても同様で、クレジットカードの支払状況や滞納などの確認も行います。実際に支払いが滞りなく行われるかを、リース会社は確認してから契約することになります。
そのため、会社でも個人事業主でも、財務内容については確認しておくことが必須と言えるでしょう。
個人事業主にとって「購入」と「カーリース」どちらがお得?
ここまで、社用車を一括購入する時とカーリース契約する時についての概要を解説してきました。どちらについても一長一短があることは、理解できたかと思います。
それでは、個人事業主で考えた時に、どちらの方がメリットは大きいのでしょう。費用計上を円滑に行い、税金対策をする際に基準があれば、個々の状況に応じて選択できます。
ここからは、個人事業主にとって車を購入するのとカーリースにするのとで、どちらがお得なのか具体的に数値を挙げながら解説していきます。
車を一括購入した時の減価償却の金額について、算定していきます。
条件を以下のように設定します。
- 車の購入価格は230万円とする(カーリースも同じ車種とグレードで算出)
- 耐用年数6年、減価償却率:0.4で計算
- 5年間での費用計上を想定
- 車検やメンテナンス費用は含めない
- 自動車税は含めない
- 定率法で減価償却
<経費計上金額>
初年度
2,300,000円 × 0.4 = 920,000円
2年目
(2,300,000 – 920,000) × 0.4 = 552,000円
3年目
(2,300,000 – 920,000 – 552,000) × 0.4 = 331,200円
4年目
(2,300,000 – 920,000 – 552,000 – 331,200) × 0.4 = 198,720円
5年目
(2,300,000 – 920,000 – 552,000 – 331,200 – 198,720) × 0.4 = 119,232円
5年使用しての減価償却累計額は、920,000 + 552,000 + 331,200 + 198,720 + 119,232 =「2,121,152円」です。
減価償却費は初年度が一番計上金額が高くなり、徐々に計上金額は下がってきます。早い段階でかかった経費を大きく計上できることはメリットです。
次にカーリースした時の金額について算定していきます。
条件を以下のように設定します。
- 一括購入の時と同じで230万円の車種とグレードで算出 ※大手リース会社を参照
- 5年後残価50万円で設定(JAAI:財団法人日本自動車査定協会を参照)
- 月間走行距離2,000kmを上限
- ファイナンスリース(メンテナンスなし)で設定
- 車検やメンテナンス費用は含めない
- 自動車税(種別割)は含める
<経費計上金額>
リース代は月額39,270円として計算していきます。
月額39,270円 × 12ヶ月 = 471,240円(5年間同一金額)
5年使用しての経費計上金額の総額は、471,240円 × 5年 =「2,356,200円」です。
カーリース契約することで年間の費用計上額は変わらず、安定した経費計上を行うことができます。
車を購入してもリースしても、トータル金額は大きく変わりません。しかし、車を一括購入とリース契約で変わるところは、2年目までの経費計上額にあります。
2年間までは、一括購入の方が経費計上を多くすることが可能です。そのため、購入時期に会社の利益が伸びている時には、購入した方が節税対策になると言えます。
税金は利益に対してどれだけ経費がかかっているかがポイントです。経費がかかっていることで、税金を抑えることができるためです。
購入は一括で資金を使用する必要があります。リース契約は毎月の支払いになるので初期費用は抑えることができます。
個人事業主の場合は、初期費用をかけずに年間同一金額で計上できる方法は、年間経費を明朗に行うことができ、経理処理の手間も省けることを考えると得策です。
ただし、会社の規模や経営状況を考えた上で、どちらの選択がメリットがあるか検討することをおすすめします。
経費にできる車の維持費とは?
車にかかる維持費は、経費として落とせるものもあります。それを知っておくと確定申告などにも利用できます。
勘定科目と項目についても記載しておきますので、参考にしてください。また、領収書などは取っておいて、経理処理に使えるようにしておくことが大事です。
- 租税公課・・・自動車税(種別割)、重量税などの税金関係
- 保険料・・・・自賠責保険料、任意保険料
- 車両費・・・・ガソリン代、洗車代、車検代などの維持費
- 地代家賃・・・月極駐車場代
- 旅費交通費・・時間貸しの駐車場代、高速道路料金
このように、車の経費は細分化されています。
減価償却も含め、経理処理に手間がかかることで、会社の人件費が多くなることが予想されます。カーリース契約にしてリース会社に任せてしまうことで、担当の負担を減らし、円滑に車の管理を行うことも視野に入れておくことも好ましいと言えるでしょう。
まとめ
カーリースに関してのエキスパート集団です。カーリースに関する様々な疑問にお答えしていきます。