大学の入学費や在学中にかかるお金を借りる「奨学金」ですが、月々の返済額が生活の大きな負担になっている新卒の方は多いでしょう。
新入社員のうちは月給が少ないことが多く、奨学金の返済額を確保できないケースも散見されます。
そんなときは奨学金の「返済期限猶予制度」や「減額返還制度」を用いることで、支払い期限の延長や返済額の減額に応じてもらえます。
この記事では、奨学金の返済が難しい場合に活用する返還期限猶予制度と減額返還制度の概要について詳しく解説していきます。
奨学金の支払いが困難な時は猶予制度を活用しよう
奨学金の支払いが困難な場合、猶予制度を用いることで支払い期間を伸ばすことが可能です。
大学卒業後に新卒で入社すると、慣れない新生活と低い収入で経済的に困る場合があります。さらに、奨学金の返済も合わせると、滞納してしまうこともあるでしょう。
そんなときに活用したい制度が返還猶予制度と減額返還制度です。これらの制度は奨学金の支払いが困難な場合に使える救済制度の1種で、返還猶予制度は返済の一時ストップを、減額返還制度は返済額の減額と期間の延長に対応してくれます。
奨学金は長期的に滞納すると信用機関のブラックリスト登録や財産差し押さえといったリスクが生じるため、返済が難しいときは奨学金相談センターに相談して、上記の制度を検討しましょう。
奨学金の返還期限猶予とは?
ここからは、奨学金の返還猶予制度の概要について紹介します。
返還猶予制度の存在を知らずに経済的に困窮してしまう方が一定数おり、そのまま滞納を続けると様々なリスクを被る可能性があります。長期的に滞納し、信用機関のブラックリストに登録されるといったケースも珍しくありません。
奨学金も無利子・低金利とはいえ、借金の1つであることに変わりはありません。借入額は個人によって異なりますが、学生の間から奨学金の返済額まで考慮して社会人になる方は少数といえます。
現時点で奨学金の支払いが滞っている場合は、返還期限猶予の制度をうまく活用しましょう。
奨学金の返還期限猶予とは、就職開始から返済を始める奨学金の支払いが困難な場合に、返還期限の先延ばしを申請する制度です。延長期間中の利息は除外され、延滞金もかかりません。
返還期限猶予には「一般猶予」と「猶予年限特例又は所得連動返還型無利子奨学金の返還期限猶予」の2種類があり、それぞれ適用条件と仕様が異なります。
一般猶予の承認要件は、主に以下の通りです。
- 現在返還が困難であること
- 税込み年収が300万円以下(給与所得者以外は200万円以下)であること
猶予年限特例又は所得連動返還型無利子奨学金の返還期限猶予の承認要件は、以下の通りです。
- 第一種奨学金のうち「猶予年限特例」「所得連動返還型無利子奨学金」を貸与された者
- 新卒または経済困難で低収入もしくは無収入であること
上記のほかにも細々とした条件はありますが、原則として「経済的に困窮しており返済が困難な状態にあること」「収入が一定水準を下回ること」が必須条件です。
返還期限猶予の承認が下りると、現時点から一定期間、支払いおよび利息の発生が免除されます。
原則として現時点で滞納している場合は滞納分を納めないと申請できませんが、以下の条件をクリアすれば滞納中でも承認されます。
- 返済できないやむを得ない事情があり、通常の返還期限猶予を申請できない
- 申請事由を「経済困難」とし、年収が税込みで130万円〜300万円以下であること
上記の制度を「延滞据置猶予」と呼び、現在進行形で滞納中の場合はこちらの制度を申請しましょう。
返還期限猶予制度の延長期間は、一般猶予で最大10年(120ヶ月)、猶予年限特例又は所得連動返還型無利子奨学金の返還期限猶予の場合は「一定の収入を得るまでの期間」です。
ただし、一般猶予であっても申請事由が以下のものに限っては、猶予期間に制限がなくなります。
- 災害の一部
- 傷病
- 生活保護受給中
- 産前休業
- 産後休業
- 育児休業
- 在学中の一部
- 海外派遣
- 給付奨学金
なお、上記を事由にする場合でも、収入面で経済的に困窮することが条件である点に変わりはありません。
延長中は利息や延滞金が発生しないため、短期間中に返済の目処が立たない場合は早急に申請しましょう。
返還期限猶予を承認してもらうには、収入以外に期限を猶予してもらうに相当する事由が必要です。主な事由は以下の通りです。
- 新卒
- 傷病
- 生活保護受給中
- 入学準備中
- 失業中
- 経済困難
- 特別研究員
- 災害
- 産前・産後・育児休業
- 大学在学中
- 海外居住
- 今年海外から帰国
- 海外派遣
- 海外で研究中
- 留学
事由によって詳細な条件が異なるため、該当しそうな方は日本学生支援機構のホームページで確認しましょう。
返還期限猶予の申請は、すべて日本学生支援機構を経由して行います。主な手段は以下の通りです。
- 郵送
- ホームページ(スカラネット・パーソナル)
いずれの方法を取る場合でも、所定の申請フォーマットへの入力・申請事由の証明書・記載不備のチェックシート・本人確認書類が必要です。
なお、返還期限猶予はすぐに適用できるわけではなく、猶予開始時期より最低でも2ヶ月以上前には提出しておかなくてはなりません。
承認には1〜2ヶ月程度の時間がかかるため、申請はなるべく早めに済ませておくのをおすすめします。
また、申請には審査があり、書類を提出すれば誰でも承認されるわけではありません。日本学生支援機構側が承認しない限り制度を利用できない点にはご注意ください。
奨学金の支払いは減額返還もある
ここからは、奨学金における減額返還制度について紹介します。
減額返還制度とは、奨学金の返済が困難な場合に、返済期間を延長したうえで毎月の返済額を減らす制度です。返済額が現状から最低2/3〜最大1/4まで調整可能なため、自身の収入に合わせて返済額をある程度コントロールできます。
本制度の利用には、返還期限猶予と同じく一定の要件と申請が必要です。また、返還期限猶予の場合は1度の申請で最大10年まで猶予期間をもらえますが、減額返還制度は適用期間が1回につき12ヶ月であるため、毎年申請する必要があります。なお、延長の最大期間は15年間です。
減額返還制度は誰でも利用できるわけではなく、年間の税込み収入が200万円〜300万円以下(雇用形態による)かつ、申請の時点で返済を滞納していないことが条件に加わります。そのため、「趣味にお金をたくさん使いたいから」といった理由で申請はできません。
減額返還制度は返還期限猶予と違い、毎月返済する点は変わりません。返還期限猶予では返済そのものをストップできるため、支払いの目処が立たない方向きの制度といえます。
しかし、減額返還制度は負担額こそ減るものの、返済が続く点には変わりありません。そのため、減額返還制度を利用するのは「少ない金額なら返済を継続できる」といった方に向いています。
なお、第二種奨学金の場合は返済期間を延ばすことで、総返済額が増加するのを心配する方もいるでしょう。減額返還制度は返済期間が延びるものの、最終的な総支払い額が変更されることはありません。そのため、利子を気にして制度の利用をためらう必要はないのです。
減額返還制度の延長期間は1回の申請につき12ヶ月まで、最大15年まで繰り返せます。そのため、収入が増えて当初の返済額を十分返せるまでに達したら、無理に申請する必要はありません。
一定の条件こそあれど、自分の支払い能力に応じて適宜調整できる点はメリットといえるでしょう。
減額返還制度の申請は、返還期限猶予と同じく、郵送またはスカラネット・パーソナルが使用できます。
対応が早いのはスカラネット・パーソナルのほうです。早急に承認が欲しい場合は日本学生支援機構のホームページから申請しましょう。
本制度を申請するにあたって、以下の書類を用意しましょう。
- 減額返還制度の申請用紙
- マイナンバーカード
- 返済が困難であることを明示できる証明書
- 記入不備がないかを確認するチェックシート
なお、スカラネット・パーソナル経由で申請する場合は、日本学生支援機構にマイナンバーカードを提出していることが条件に加わります。
また、申請する時期については猶予開始希望月の3か月前から前々月末までに行いましょう。仮に11月から減額返還制度を利用したいと考えた場合、7月や8月までに申請をする必要があります。
奨学金を返せなくなったらどうなる?
ここからは、奨学金の返済を滞納した場合に起こるリスクについて紹介します。
奨学金は信用機関が関与している借金であるため、長期滞納することで信用機関のブラックリストに登録されます。
一度ブラックリストに登録されると、ローン契約や不動産契約を始めとした各種支払いにおいてデメリットが生じるため、不自由のない生活を送るには極力避けなければなりません。
奨学金の返済を2ヶ月以上滞納すると、延滞金が発生します。
延滞金は2回目の引き落としができなかった日の翌日から発生し、金利は令和2年以降の分なら第一種奨学金で年利1.5%、第二種奨学金で3%程度です。令和2年以前の返済分はより高い金利が適用されます。
奨学金の延滞金は、原則として口座振替以外の支払い方法に対応していません。次回振替の途中で支払うといった対処ができないため、たとえ支払いできる状態にあっても1ヶ月分の延滞金がかかってしまうのです。
口座残高の一時的な不足が原因で、すぐに支払える状態にある場合は、奨学金相談センターに連絡してみましょう。
奨学金を4ヶ月以上滞納すると、信用機関のブラックリストに登録されます。
正確には「信用機関の信用情報に金融事故の存在が登録される」といった内容なのですが、これを世間一般で「ブラックリスト入り」と呼びます。
そもそも信用情報とは個人の支払いに関わるあらゆる情報のことで、金融事故以外にも契約内容や支払い状況といった情報も保管されています。
信用情報は国内にある信用機関同士で共有されており、ローン契約や不動産契約における審査のときに参照して契約者の支払い能力を確認します。世間で「ブラックリストに登録されるとローン審査が通らない」といわれるのは、このためです。
信用機関のブラックリスト登録は奨学金以外にも、クレジットカード・ローン返済・家賃・携帯料金といった支払いを滞納しても登録されます。
奨学金の返済を長期的に滞納すると、最終的に債権回収会社からの催促や財産の差し押さえにまで発展します。それでも返済額が足りない場合は、債務整理によって自己破産するしかありません。
一度自己破産すると、必要最低限の家財以外の財産をすべて失ってしまいます。また、保証人を立てている場合は保証人の財産も徴収の対象に含まれるため、保証人の生活にも大きな影響を与えてしまいます。
奨学金が返せない理由は?
ここからは、奨学金が返せなくなるケースでよくある理由を3つ紹介します。
1ヶ月の返済額は個人によって異なりますが、場合によっては高額な返済額が毎月かかる可能性もあります。新社会人だと比較的月給が少ないため、想定よりも生活がギリギリといった方も珍しくありません。
そもそもの収入が低いと、奨学金の返済に充てるお金を捻出するのが困難です。
社会人生活では光熱費・食費・保険料など学生の頃より支出が増えます。実家をでて賃貸物件で暮らす場合は、家賃もかかるでしょう。新卒だと給与から生活の支出を差し引いただけでギリギリといったケースも珍しくありません。
また、ご家庭によっては両親への仕送りや介護にお金がかかるといったパターンもあるでしょう。そんななか毎月一定額の返済金を捻出するのは簡単ではありません。
収入が低くて返済が難しい場合は返済期限猶予や減額返還制度の承認要件を満たしている可能性が高いため、制度を積極的に活用するのをおすすめします。
毎月の固定費が高いと、奨学金の返済分を確保できない可能性があります。
代表的なものが「家賃」です。就職を機に引っ越しするとき、身の丈に合わない家賃の物件に住むと、家賃の負担額が重くのしかかり、収支に余裕ができないのです。
また、車を所有すると自動車税・ガソリン代・車検代といった維持費が大きくかかります。車がないと生活できない場合は仕方ありませんが、近隣エリアに公共交通機関が整っている場合は、そちらを優先的に使った方がよいでしょう。
収入と支出のバランスを考えず、やみくもにお金を使ってしまうと、月末頃にお金が足りなくなります。
奨学金の滞納は3ヶ月分までならブラックリストに登録されませんが、計画的にお金を使わないと滞納分のお金を捻出すること自体難しくなります。
初回の滞納だけなら2ヶ月分だけで済みますが、4ヶ月分ともなると変動費の節約だけではどうにもならない額にまで膨れ上がっているかもしれません。
無計画にお金を使うと、収拾がつかない事態に陥るリスクがあります。
奨学金を確実に返す方法
ここからは、奨学金を確実に返すための対処法を3つご紹介します。
奨学金の長期滞納は、ブラックリスト登録や差し押さえなど、生じるデメリットが大きい行為です。返済分のお金が捻出できない場合は、以下の方法を試しましょう。
現時点の収支バランスでどうしても返済金を確保できない場合は、副業で収入アップを目指すのも一つの手段です。現在はパソコンやスマートフォンが1台あればできる副業が多数存在します。
1ヶ月に1万円〜2万円程度ならば隙間時間で稼げるものも多いため、副業が許されている会社であれば積極的に収入アップを目指してもよいでしょう。
また、副業は収入アップだけでなく、自身のスキルアップや隠れた才能を見いだせる可能性もあります。副業はキャリアアップにもつながるため、返済に困っていなくてもおすすめです。
奨学金を確実に返すには、収入を得たときに返済額や家賃といった固定費を先に収入から差し引きましょう。固定費は毎月必ずかかる費用であるため、事前に差し引いた残り分でやりくりする方法がおすすめです。
また、毎月かかる費用のなかでも光熱費は月ごとで金額が異なるため、口座には常に数万円程度余分に入れておきましょう。口座残高が支出分ギリギリしか残っていないと、光熱費の引き落としが先に行われた際、残高が返済額を下回る可能性があります。
奨学金の滞納は2回目から延滞金が発生するため、引き落としができずに繰り越される事態は極力避けなければなりません。
どうしても支払いが難しい場合は、長期滞納でブラックリスト入りする前に両親に相談するのをおすすめします。
親を心配させたくないといった理由で相談をためらうケースもありますが、2回目の滞納では連帯保証人に連絡がいきます。
奨学金の連帯保証人は両親に設定するケースがほとんどであるため、どちらにしても滞納の存在が両親にバレてしまうのは避けられないでしょう。
2回目の滞納からは延滞金も発生するため、早めに両親へ相談して、一度お金を立て替えてもらうなど、何らかの対策を取ってもらいましょう。
まとめ
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