消費者を保護するためのクーリングオフ制度は、カーリース契約には適用されません。よって契約後に車のリースをキャンセルする場合は、カーリース業界の中途解約のルールに則ることになります。

しかし、カーリース契約は特段の事情がない限り、中途解約はできません。

この記事では、例外的に中途解約が認められるケースや、その場合の手続きの流れを解説します。また、中途解約という事態になるのを防ぐための心構えや対策も説明します。

カーリースのクーリングオフと中途解約について

以下では、カーリースにおけるクーリングオフ制度と中途解約の違いなどを解説します。

カーリースはクーリングオフの適用対象外で、契約期間中に契約キャンセルする場合は中途解約として解約金や違約金を請求されることがあります。

クーリングオフ制度について

クーリングオフ制度について
まず、クーリングオフ制度の概要について解説します。

もともとこの制度は、消費者が特定の状況下で商品・サービスの売買契約を結んだ場合、一定期間内であれば一方的に契約をキャンセルすることができるというものです。

クーリングオフ制度とは何ですか?
クーリングオフ制度は、消費者が商品やサービスの契約を一方的に解除できる制度のことです。これが適用されるのは特定の取引きに限られていて、新車・中古車を問わず車の売買取引や、カーリースによる車のリース契約は適用外となります。
クーリングオフ制度とは?

クーリングオフ制度とは、消費者が契約を締結した後、一定期間内に自由に契約を解除できる制度のことです。

これは、消費者が無理な契約を強制された場合や、キャッチセールス・押し売りなどの特殊な状況下で契約を結ばされた際に、消費者を保護するために設けられました。

クーリングオフ制度では、上記のような状況で購入した一定の商品やサービスに対して、8日以内に解除できる権利が認められています。

ただし、必ずしも全ての商品やサービスに対して適用されるわけではなく、対象となる商品やサービスには一定の条件があり、例外もあるので注意が必要です。

また、消費者がこの制度を利用する場合は一定の手続きが必要です。書面や電磁的記録によって、契約年月日や契約者名、購入商品名、契約金額、そしてクーリングオフの通知を発した日などを記載したものを期間内に通知しなければなりません。

クーリングオフが適用されないケース

意に沿わない商取引を一定期間内にキャンセルできるクーリングオフ制度ですが、どんな場合でもこの制度が適用されるわけではありません。

例えば、店舗で直接購入した商品や通信販売で購入した商品は対象外となります。もちろん、店舗での返品や交換は日常的にも行われていますが、これはクーリングオフとは関係なく、あくまでお店側のサービスの一環であることは覚えておきましょう。

また、通信販売の場合は個々の通販業者が定めた返品特約に則って対処されます。通信販売で、もしもこうした特約が記載されていない場合は、商品到着後8日間以内であれば返品が可能です。

ただし、そのようなケースでも返品にかかる送料は購入者が負担するのが一般的です。

そして、新車・中古車の売買やカーリース契約もクーリングオフ制度は適用されません。クーリングオフは商品購入後に「頭を冷やして考え直した」際にキャンセルできるというのがポイントなので、自動車のように、熟慮して購入するタイプのものは対象とならないのです。

カーリースはクーリングオフできない

前項で述べた通り、カーリース契約はクーリングオフ制度の適用外となります。新車・中古車の購入についても同様で、いずれも熟慮の上で契約するのが普通なので「後になって考え直す」ことが想定されていないということです。

しかし、実際には何らかの理由でカーリース契約をキャンセルする必要が生じることもあるでしょう。その場合は「中途解約」という形になり、違約金が発生したり解約金として残金を一括で支払ったりすることが一般的です。

違約金の計算方法はカーリース会社によって異なります。多くの場合、残っている期間のカーリース料金や事務手数料などを含めて計算しますが、基本的に残っている契約期間が長ければ長いほど高額になるため、気軽にキャンセルできるものではありません。

事故による車の破損や家族の増加、生活環境の変化など、事前に予測不能だった事態が発生した場合でも、キャンセルには多額の費用がかかります。詳細は後述しますが、カーリースではこうした事態に備えておくことも重要です。

事業者のリース契約はクーリングオフが可能?

事業者がカーリースを利用する場合も、基本的にはクーリングオフは適用されません。しかし、個人事業主などで商取引に不慣れな人を保護するために、個人あるいは家庭用の車のリース契約に限り適用されることがあります。

クーリングオフは、訪問販売などの取引きで商品の売買契約を結んだ場合に、一定期間内であれば無条件で契約を解除できる制度です。これは商取引に不慣れな消費者を保護するためのものなので、事業者には適用されないのが普通でした。

ただし、一括りに「事業者」と言っても、必ずしも商取引に慣れている人ばかりとは限りません。フリーランスなどの個人事業主を狙った悪質な商取引の被害も少なからず存在します。

そこで経済産業省は、たとえ事業者名で契約しているケースでも、主に個人あるいは家庭用で使うものであれば、原則としてクーリングオフは適用されるという見解を打ち出しました。

これによって、事業者がリース契約を結んだ場合は、ケースバイケースでクーリングオフが可能となったのです。

カーリースの中途解約について

カーリースの中途解約について
ここまでで、クーリングオフ制度の概要と、カーリースはクーリングオフの適用対象外であることが分かりました。

次に、カーリース契約を「中途解約」する際の条件について見ていきましょう。

カーリース契約は中途解約できますか?
カーリース契約にはクーリングオフは適用されないことから、一度は締結した契約をキャンセルする場合は中途解約の扱いになります。しかし、中途解約は相応の理由がないと認められないので注意が必要です。さらに、違約金などを請求されることもあります。
カーリースで中途解約ができるケースとは?

先述した通り、カーリース契約はクーリングオフによるキャンセルができません。キャンセルが可能なのは、契約する前の段階だった場合と中途解約の要件を満たした場合に限ります。

つまり、カーリース契約後のキャンセルは法制度に基づくクーリングオフではなく、あくまでもリース会社の定めたルールに基づく中途解約という形で行われることになります。

しかし、原則的にカーリースの中途解約は認められないことがほとんどで、もし認められたとしても違約金や解約金を請求される可能性が高いので注意しましょう。

解約のための詳しい条件はリース会社によって異なりますが、主に考えられる中途解約が認められるケースについて以下で紹介していきます。

ケース①契約者が運転できなくなった

カーリース契約では、基本的に契約後のキャンセル・中途解約は認められません。しかし、契約者(車の使用者)が病気や怪我による長期入院を余儀なくされた場合、または死亡したなどの事情があれば、例外的に認められることもあります。

契約者が亡くなった場合は、遺族がリース車をそのまま使用することで、中途解約を避けるという方法もあるでしょう。このようなケースでは、リース会社で申請手続きを行い、契約者を変更する必要があります。

ケース②リース車両が使用不能になった

リース車両が事故や盗難などのトラブルで使用できなくなった場合、契約者は中途解約金を支払って契約を終了させることになります。早めにリース会社に報告し、手続きを行うようにしましょう。

リース会社によっては、契約車両が修理不能になったことで中途解約を希望する場合はサポートデスクが対応してくれることもあります。

特に事故で車が故障した場合は、自動車保険(任意保険)で補償されるかどうかも重要なので、加入している保険の保障内容を確認しておきましょう。

ケース③ライフスタイルが大きく変わった

個人的な事情で中途解約を希望する場合は、その理由が海外転勤や家族構成の変化など正当なものと認められるかどうかが重要です。単に気が変わったなどの理由では、一般的には契約途中でのキャンセルは認められないでしょう。

例えば、海外転勤でリース車両を使用しなくなる場合や、出産で家族が増えて車を変える必要が生じた場合などは、リース会社も柔軟に対応してくれることがあります。

車をリースする時点で、こうした将来的なライフスタイルの変化が見込まれる場合は、短期契約が可能なリース会社を選ぶとよいでしょう。

カーリースの中途解約の手続きについて

カーリースの中途解約の手続きについて
ここまでで、カーリース契約のキャンセルは、一定の条件下で「中途解約」として可能であることを説明してきました。

次に、カーリース契約を中途解約する際の手続きについて見ていきましょう。

①車の回収・査定

リース契約を中途解約すると、まずリース会社は車の回収と査定を行います。

リースしていた間に車についた傷やへこみ、そして走行距離などをチェックし、その車の残存価値を算出することになります。

細かい手続きはリース会社によって異なりますが、この回収・査定は必ず行われると考えていいでしょう。

この段階で、もしも車に大きな傷やへこみなどがついていることが確認されれば、次項で解説する解約金の算出に大きく影響します。

②解約金の算出

車の査定を経て解約金が算出されます。この解約金の計算で、車両についた傷やへこみ、加えてリースしていた間の走行距離などが考慮されるのは前項で説明した通りです。

車の価値が大きく下がっていると判断されれば、追加費用の支払いによって価値の補填が行われることがあります。この他に、リース契約の残存期間を通して本来支払われるべきだった月額使用料をはじめ、事務手数料、損害金なども計算に入れられます。

カーリース契約時に設定される車の残価は、通常の使い方をした場合に予想される査定価格の目安です。よって、ユーザーはリース終了時に残価に見合う状態の車を返却しなければならず、車の価値が大きく下がっていた場合に、こうした追加費用や修理費用を請求されることは珍しくありません。

ただし、契約方式によっては追加料金が発生しないこともあります。こうした点については、契約内容をよく確認することが必要です。

③必要書類の提出

解約金が確定し、契約者の費用負担について説明された後、契約者の最終的な意思確認が行われます。もし中途解約する意思に変わりがないのであれば、必要書類を提出することになります。

この時の必要書類としては、まずリース契約書や車検証などが挙げられます。書類に不備があると手続きが遅れることがあるので、事前に用意しておくべきものを確認・用意しておくことが大切です。

④解約金を支払う

リース会社から中途解約の合意書が届きますので、それに記入して返送し、解約金の精算をしましょう。精算方法は、書類返送後に銀行振込となるのが一般的です。

細かい手続きの流れはリース会社によって多少異なることもありますが、大まかには以上のような形になるでしょう。

カーリースでの中途解約の対策について

カーリースでの中途解約の対策について
最後に、カーリースを中途解約しなくても済むように、契約締結の時点でどのような対策を立てておくといいのかを解説します。

カーリース契約を中途解約する事態を防ぐ方法はありますか?
カーリース契約を中途解約するのはできれば避けたい事態です。予防策としては、契約期間を短めにする、一定期間で車を乗り換えられるサービスを選ぶ、などが考えられます。また、中途解約に伴う違約金の支払い分の負担を軽減できる保険を利用してもよいでしょう。
契約期間に注意しよう

ここまでで説明してきた通り、カーリース契約の中途解約には条件があり、解約金も発生します。そのため、リース契約を締結する段階で、中途解約という事態にならないよう対策を講じておくのが無難です。

考えられる対策として、まずリース契約期間中に生活環境やライフスタイルが変化する可能性を考慮することです。

例えば、世界中に転勤する可能性がある人は、契約期間中に解約する必要が生じるリスクが高いので、契約期間を転勤の周期に合わせて短く設定するといいでしょう。

また、カーリースでは契約期間中の車の乗り換えはできません。出産などで家族構成が変化する可能性があるなら、それを前提にした車選びをして、途中で車を変更しなければならなくなる事態を防ぐようにしましょう。

カーリース契約時には、どうしても新車に安く乗れる長期契約を選びがちです。その後の生活環境やライフスタイルの変化に対応できるよう、将来を見据えた計画を立て、それに適した車種と期間を選択することが重要です。

乗り換えサービスの利用も検討しよう

カーリースの利用時は、車の必要性の変化に備えて「乗り換え」が可能なリース会社を選ぶことも重要です。

契約プランによるものの、一定期間が経過すると車の乗り換えができるサービスを提供している会社もあります。このようなプランに加入しておくと、前項で挙げたように近いうちに家族が増えて大型の車が必要になりそうな場合に便利です。

あるいは、最初から契約期間を短期間に設定して、その都度乗り換えるようにするなど、自分に合ったプランを選びましょう。

事故に備えよう

リース車が事故で破損して走行不能になると、リース契約は中途解約かつ強制解約になります。

事故に遭った上に車を返却しなければならず、修理費用も含めた解約金を請求されるなど、踏んだり蹴ったりになることも珍しくありません。

こうした事態に備えて、任意保険の内容も確認しておきましょう。リース車も車両保険や対物賠償保険の補償対象となるので、修理費用がカバーされることで中途解約のリスクも低く抑えられます。

専用保険に加入しよう

前項で任意保険のことを説明しましたが、カーリースでは専用保険が用意されていることもあります。

専用保険の場合、通常の自動車保険ではカバーし切れない違約金の分についても補償されるので、万が一のときに安心です。

また、専用保険の加入期間は車のリース期間と同じになるため、毎年の契約更新手続きが不要なのも利点です。

また、保険によっては契約期間中に事故を起こしても、翌年の等級や保険料が変動しないものもあります。こうしたタイプの保険は、リース業者と保険会社が連携して用意されていることが多く、保険料も月額利用料の中に組み込むことができるので便利です。

ただし、補償内容を自由に選べないこともあるので注意しましょう。場合によっては、ユーザーにとって不要な補償がついて保険料が割高になることも考えられます。

また、保険料が変動しないため、無事故のままで契約年数が長くなるとかえって不満に感じることもあるほか、事故で全損した際の中途解約にのみ適用される(車両保険が解約金に補填される)等の条件もありますので注意しましょう。

まとめ

①カーリース契約はクーリングオフの対象外で、原則的に中途解約も認められていない
②契約者が運転できなくなった場合などは中途解約が認められることもある
③中途解約する時の流れは、車の回収・査定→解約金の算出→必要書類の提出→解約金の支払い
④カーリース契約の解約金は、契約期間や車の状態に応じて算出される
⑤カーリース契約の中途解約を防ぐ方法としては、契約期間に注意し、乗り換えサービスの利用などを検討すること

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グーネット定額乗りマガジン編集部
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