債務整理の手続きを行って自己破産した場合、カーリースを利用するのは困難です。
自己破産することでいわゆるブラックリスト入りし、ローンやリース契約全般について利用制限がかかるからです。
ここでは、自己破産手続きの概要について触れつつ、カーリース契約前・契約中・契約後のそれぞれの時点で自己破産した場合の対応について解説していきます。
また、「任意整理」や「個人再生」などの債務整理の手続きを行った場合についても説明します。
自己破産とカーリースの関係
多額の借金を背負い、それらの返済が難しくなった場合、裁判所を通して債務を整理してもらうのが「自己破産」という手続きです。
この手続きが行われると、一部の例外を除いて、抱えている債務は全て帳消しになります。実はカーリース契約も、この自己破産手続きで整理対象となります。
そのため、リース契約者が自己破産するとリース契約にも影響が及び、会社側から契約を解除されて車の返還を求められることもあるので覚えておきましょう。
自己破産について
最初に、自己破産の概要について解説します。
自己破産は、多額の借金を抱えて返済が難しくなった人が、裁判所に申し立てることで債務を免除してもらう手続きのことです。
カーリース料金の支払いも、こうした債務の一種です。
自己破産は、借金の返済が困難になった人が申し立て手続きを行うことによって、裁判所が債務を免除する制度です。
自己破産をすると、税金や罰金などの一部を除く全ての借金を免除してもらうことができます。
自己破産には大きく分けて「管財事件」と「同時廃止事件」の2種類があります。
管財事件は、裁判所が破産管財人を選任して財産の金銭的価値を調査し、債権者に配当する手続きです。
同時廃止事件は、裁判所が破産管財人を選任しないケースのことをいいます。
自己破産すると、クレジットカードやローンを一定期間利用できなくなるなどの制限が生じるので注意しましょう。
また、信用情報に事故情報が登録され、いわゆるブラックリスト入りするため、5年~10年間は各種借入が難しくなります。
自己破産は、借金の返済が困難な場合に利用できる最後の手段です。検討するのであれば弁護士や司法書士に相談し、手続きのメリットとデメリットをよく理解することが大切です。
自己破産のメリットは、借金の返済が免除されるため、経済的に自由になれることです。
自己破産を選択する人は借金の返済に追われる生活をしていることがほとんどなので、それによる負担やストレスから解放されるでしょう。
自己破産では破産管財人によって所有する資産を整理・処分されることになります。しかし、全て処分されるわけではありません。生活に必要な衣類や家具のほか、一定額以上の預貯金などが残されるので、その点は安心です。
自己破産すると、借金の返済義務は免除されますが、いくつかのデメリットもあります。
まず、前述した通り生活に必要なものを除くほぼ全ての資産が整理・処分されることや、官報に住所・氏名・負債額が載るので信用情報に傷がつくことが挙げられます。
また、信用情報は各金融機関で共有されるため、5年~10年は金銭の借り入れが難しくなるでしょう。
さらに、自己破産すると一定の資格制限を受ける可能性があります。例えば、弁護士や司法書士の資格は一定期間・あるいは永久に得られなくなることもあります。
自己破産した後にカーリースを利用する場合
ここからは、自己破産した経歴がある人が、新たにカーリース契約を結ぶことはできるのかどうか、もしできない場合は車をどのように入手すればいいのか、その方法について説明していきます。
自己破産をすると、信用情報機関に履歴が残り、5年~10年間はカーリース契約ができません。
カーリースでは、年収・職業・債務履歴にもとづき契約可能か判断するための審査が行われますが、自己破産をすると、これらの項目で不利になってしまいます。そのため、自己破産の経験がある場合は5年~10年が経過した後に申し込むのが望ましいでしょう。
一定期間が経つと信用情報機関に残る履歴が消えるので、その間に安定した収入を得ていれば、カーリースの審査に通る可能性が高くなります。
前項で説明した通り、自己破産の手続きを取った事実は信用情報として登録されます。
その情報は各種金融機関などで共有されるので、カーリースを利用する際も、自己破産したことを隠して契約することはできません。そのため、自己破産した人は契約前の段階で審査に通らない可能性が高いです。
信用情報には、クレジットやローンの契約から返済・支払状況、そして借入残高に至るまで記録されています。その内容から返済能力に「難あり」と判断されると、たとえ自己破産していなくても審査には通らないでしょう。
とはいえ、自己破産した経歴があるからといって、絶対にカーリースの審査に通らないわけでもありません。審査では現在の職業や年収、勤続年数なども考慮されるので、自己破産してからある程度の時間が経って収入が安定していれば、審査に通る可能性は高くなります。
また、審査の内容にもよりますが、家族等に連帯保証人になってもらうことで契約できるケースもあります。
カーリース契約が可能か確認するために自分の信用情報を知りたい場合は、指定信用情報機関である「CIC」などに開示を求めることができます。
不安な場合は、まず自分の情報がどうなっているかを確認してみるとよいでしょう。
自己破産の履歴がある人でも、状況によってはカーリース契約を結ぶことができることがあります。審査はあくまでも個々の状況に応じて行われますので、必要であれば直接カーリース会社に相談してみましょう。
自己破産後も事故情報の記録がまだ残っており、このままではカーリースの審査に通るかどうか不安だという場合は「家族名義でカーリース契約を結ぶ」という方法があります。そうすれば、自己破産した本人の信用情報は関係なくなります。
もちろんこの場合は、リース契約を結ぶ家族本人から同意を得る必要がありますし、またこの家族にも自己破産の履歴がないか注意しなければなりません。その上で契約を結び、車を共有するといいでしょう。
ちなみにリース車両の共有については、常識的な範囲内で家族や友人・知人とシェアするなら特に問題はありません。しかし、最初から完全に「名義貸し」のような形で契約を結ぶと、法律違反となることがあるので注意が必要です。
また、リース会社によっては、家族・友人・知人間での車両の共有を禁止する旨が約款で定められていることがあります。こうした場合、何らかの理由でリース車両を共有していることが分かってしまうと契約違反と見なされることもあるので、気を付けましょう。
カーリースとは直接関係ありませんが、自己破産後でもローン形式で車を利用する方法があります。それは販売店が独自に提供している「自社ローン」を利用する方法です。
自社ローンは、信用情報に関係なく利用できることが多いです。また、販売店独自のものなので、一般的な銀行や信販会社が提供するローンを利用するよりも手続きが比較的簡単な点がメリットです。
ただし、契約内容や具体的な条件は販売店により異なるので注意しましょう。例えば、自社ローンを利用して購入できる車は一部の中古車に限られていることがあります。
また、金利が低め・あるいは金利が0%であるかわりに車両価格や手数料が高いため、返済総額が高くなることもあります。
この他にも自社ローンのデメリットとしては、保証人を求められたり、分割の支払回数が短くなりがちだったりする点も挙げられます。
自社ローンの利用時は、こうした点を踏まえてよく検討するようにしましょう。
カーリースの利用中に自己破産した場合
ここまで、自己破産した履歴がある人がカーリースを利用する場合について見てきました。
次は、カーリースの契約期間中でリース車を利用している人が自己破産したというパターンだとどうなるのか、解説します。
カーリース契約中に自己破産すると、リース会社から車を返還するよう求められます。これは、車の所有権がリース会社にあるためです。
自己破産によって月額料金が支払える見込みがなくなった以上、車は正式な持ち主であるリース会社に返すことになります。
通常、カーリースの契約期間中であるにも関わらず、車を返還するという場合は、解約金が発生します。これは、契約者側の都合による中途解約の場合、あるいは契約違反があったことによる会社側からの契約解除だった場合も同様です。
しかし、自己破産したことが理由で車を返還する場合は、裁判所から免責が認められていることになるので、残りのリース料の支払義務はありません。そのため、解約金も支払わずに済むことになります。
ただし、細かい手続きなどはリース会社によって異なります。自己破産した場合は、どのような段取りを踏んで車両を返却するといいのか確認しましょう。
カーリースの契約期間中に自己破産した場合、車の扱いには注意が必要です。車を返却する必要がないとしても、その車を勝手に処分すると自己破産の手続きに悪影響を及ぼすことになります。
例えば、リースしてきた期間が長くリース当初よりも車の価値が大きく下がっている状態だと、返還する必要が生じないこともあります。
しかし、自己破産に伴いリース契約が解約となった時点でリース車を使用する権利も失われるので、車両を勝手に売却したりしてはいけません。
この場合、手元に残った車は財産目録に記載し、破産管財人や弁護士などに処分を委ねることになります。前述した通り、自己破産では多くの財産が債務の埋め合わせのために処分されることになるからです。
勝手に車を処分すると、手続きが長引いたり、かえって費用がかさんだりする恐れがあります。同じ理由から名義変更などもできないので、注意しましょう。
カーリースの契約期間中に自己破産した場合、残り期間分のリース料の支払いが免除されることになります。自己破産は債務の免責を認める制度なので、これは自然なことです。
自己破産をすると、それまで抱えていた債務は帳消しになりますが、帳消しにできない債務も存在します。それを「免責不許可事由」といいます。主なものとしては、ギャンブルや株で生じた借金や、詐欺的な方法で借りた借金などです。
カーリースのリース料は免責不許可事由には該当しないので、自己破産の申し立てが認められれば残り期間分の支払いは免除されるでしょう。
また、返却後の審査によって車の価値が契約時に設定した残価を下回っていたとしても、追加料金を請求されることはありません。
ただし、自己破産手続き前にカーリースの料金だけを優先して返済するなどしていると、免責が認められないこともあります。
自己破産が必要になった時点で、専門家にきちんと相談しましょう。
ここまで説明した通り、カーリースの契約期間中に自己破産すると、通常は車をリース会社に返却しなければなりません。ただし、契約時に連帯保証人がついている場合は、車を継続して利用することができる場合もあります。
連帯保証人は、契約者がお金を支払えなくなった場合(債務不履行時)にお金の支払い義務をかわりに負う人のことです。
契約時に連帯保証人がついているかどうかで対応も異なるので、リース会社に相談してみましょう。
ここまで解説した内容は、あくまでも一般的に言えることに過ぎません。実際にどのような対応になるかは、リース会社によって異なります。
自己破産の申し立てを行うことが決定したら、とにかくその時点でリース会社に相談しましょう。
その他の債務整理とカーリース契約の関係について
ここまでで、自己破産とカーリース契約の関係について解説してきました。
この債務整理の手続きには、自己破産以外にも「任意整理」や「個人再生」などの方法があります。
これらの手続きを取った場合、カーリース契約はどうなるのかも見ていきましょう。
任意整理とは、専門家を通して債権者と交渉し、借金の返済方法を変更する債務整理の一種です。この手続きによって債権者との間で話がまとまれば、利息分の支払いが免除されたりします。
平たく言えば、任意整理は借りているお金の利息や遅延損害金の負担を減らす手続きです。自己破産と違って裁判所を通す必要がないので、柔軟な解決方法を探ることができますし、生活上のデメリットも少なく済みます。
また、任意整理は債権者ごとに手続きを行うので、カーリース以外の借金を任意整理するのであれば、カーリース契約は継続できるでしょう。
ただし、任意整理も自己破産と同様に信用情報機関に登録されるので注意してください。つまり、カーリース契約を除く債務について任意整理を行ったとしても、その後新たに別のカーリース契約を結ぶのが難しくなるということです。
かつて任意整理を行った経歴が影響して、審査に通らなくなる可能性があります。
個人再生とは、裁判所に借金返済が困難であることを認めてもらい、借金を大幅に減額してもらう債務整理の一種です。
借金の理由に関係なく手続きを行えることや、財産を整理することになってもマイホームは残せるといったメリットがあります。
ただし任意整理とは異なり、ローンやカーリースの契約も全て手続きの対象となります。カーリースの契約期間中である場合は、リース契約を継続するのは難しくなるでしょう。そのため、個人再生手続きを行った段階でカーリース契約は契約解除となります。
具体的にどのような手続きの流れになるかはリース会社によって異なりますが、借りていた車両ももちろん返還しなければならず、自己破産とは異なり違約金が発生することも考えられます。
また、手続きが一年程度かかることや、自己破産手続きと同じように信用情報機関へ事故情報が登録されることも忘れないようにしましょう。
まとめ
カーリースに関してのエキスパート集団です。カーリースに関する様々な疑問にお答えしていきます。