2024年4月に働き方改革関連法が改正されたことによる、トラックドライバーの労働時間規制が物流業界に大きな影響を与える問題、いわゆる「2024年問題」は、白ナンバートラックのドライバーにも関係あるのでしょうか。

2024年問題によって、運送業界におけるドライバーの働き方がクローズアップされ、長時間労働の常態化や荷待ち時間の削減など、多くの課題が明らかになりました。それらの問題は、白ナンバーのトラックドライバーにとっても無関係ではありません。

この記事では、2024年問題が白ナンバーのトラックドライバーに与える影響について解説し、改善基準告示の詳しい内容やナンバープレートの種類に応じた規制の違いなどについても紹介します。

2024年問題は白ナンバーのドライバーにも影響がある

2024年問題は白ナンバーのドライバーにも影響がある
2024年問題は、営業ナンバーとも呼ばれる緑ナンバーのトラックドライバーだけでなく、一般的な自家用車を使用する白ナンバーのドライバーにも影響があります。

特に、労働者として雇用されて配送業務を行っている場合は、白ナンバー車で配送しているドライバーも「自動車運転者の労働時間等の改善のための基準(改善基準告示)」の対象となり労働時間の規制対象となるため注意が必要です。

改善基準告示に違反すると、労働基準監督署による調査や指導の対象となるため、この記事で解説する条件や対象をよく確認しておきましょう。

現代でトラックドライバーが抱えている問題

現代でトラックドライバーが抱えている問題
現代の物流における要であるトラックドライバーは、多くの需要を支える存在であるだけに、大きな負担や大変な労働環境に置かれている場合があります。

トラックドライバーが抱える問題は、付帯作業の負担や長時間にわたる荷待ち、過酷な労働時間など様々です。

ここでは、上記の問題点について具体的に解説します。

付帯作業による負担の増加

トラックドライバーの主な仕事は、荷物の運搬や荷物の受け渡しですが、積み込みや荷造り、梱包といった配送以外の付帯作業を任されることもあります。このような付帯作業により肉体的・精神的な負担が増加することは、トラックドライバーが抱える大きな問題の一つです。

2019年(令和元年)6月15日からは「貨物自動車運送事業輸送安全規則」の改正により、荷役作業や付帯作業を行った場合に、それらの作業内容と所要時間を乗務記録に記載することが義務付けられました。

長時間の荷待ち

「荷待ち」とは、ドライバーが荷物の積み下ろしを待っている状態を指しており、長時間の荷待ちが発生することで、ドライバーの大きな負担となっています。

荷待ち時間の発生は荷主企業の都合によるもので、ドライバー側がいくら急いでも解消できないため、その常態化がかねてから問題となっていました。

荷待ち時間はドライバーの拘束時間に含まれるため、長時間の荷待ちが生じることで、ドライバーの稼働可能時間が減ってしまうことは、契約企業にとってもマイナスの影響となります。

過酷な労働時間

付帯作業や荷待ちが原因で、トラックドライバーに過酷な労働時間が強いられていることが問題となっています。複数の付帯業務と長時間の荷待ちが重なってしまうと、ドライバーの拘束時間が1日あたり12時間を超えることも珍しくありません。

過酷な長時間労働が続くとドライバーの心身が疲弊し、事故リスクが高まる可能性があるため、労働時間を適切に管理する体制が求められています。

慢性的な疲労を避けられない職場環境ではドライバーの離職率も高くなり、業界全体としても労働力不足に陥る恐れがあるため、早急な対策が必要です。

2024年問題にかかわる「改善基準告示」とは?

2024年問題にかかわる「改善基準告示」とは?
改善基準告示とは、トラックドライバーの過重労働や長時間労働を軽減することを目的として2024年4月から適用された基準であり、時間外労働時間の上限が明確に規定されています。

この基準では、労働時間や休息時間、運転時間、残業時の賃金などが規定されていますが、その具体的内容について知らないという方も少なくないでしょう。

ここでは、2024年問題にかかわる「改善基準告示」の内容を詳しく紹介します。

時間外労働時間

運送業界では長時間労働が慢性化していたため、それを是正する目的で、改善基準告示では時間外労働時間の上限が明確に定義されています。

2024年4月1日から適用された改善基準告示では、ドライバーの時間外労働時間は「960時間/年」が上限であると規定され、月間の時間外労働時間も80時間までと制限されるため注意が必要です。

また、将来的には、ドライバーの時間外労働時間の上限規制も一般職と同様720時間になるため、今後を見越して労働時間管理を徹底しなくてはなりません。

残業割増賃金率

残業割増賃金率については、2023年の4月から変更されています。

残業割増賃金率とは、法定労働時間(8時間/日、40時間/週)を超えて労働した場合に、本来の賃金にプラスして支払うべき賃金の割増率のことです。

変更前までの残業割増賃金率は、大企業が50%、中小企業は25%と定められていましたが、変更後は中小企業も50%に引き上げられています。

残業割増賃金率の上昇は、ドライバーの労働意欲を向上させ、労働環境の改善に寄与するでしょう。そのため、企業は割増賃金を適切に支払い、業務効率を高める取り組みを進めることが重要です。

連続運転時間

長時間の運転による疲労と、それに伴う事故リスクを軽減するために、ドライバーの連続運転時間を4時間以内にすることが義務付けられています。その点については従来通りで変更ありません。

ただし2024年4月からは、運転を中断した際は原則として連続10分以上の休憩を与えることが定められました。例外として、途中に駐停車できる場所がない場合、連続運転時間を4時間30分まで延長できるようになりました。

運転時間

改善基準告示では、ドライバーの健康に配慮して、1日あたりの運転時間の上限も定められています。具体的には2日平均で1日あたり9時間以内、2週平均で1週あたり44時間以内です。

2024年4月の改正では、拘束時間や休息時間に関する規定の見直しが行われましたが、運転時間に関する上記の規定に変更はありませんでした。そのため、運送業界でこれらの基準を引き続き遵守することが重要です。

ドライバーの健康と安全を守るため、適切な運行計画の立案や労務管理の徹底が求められます。

1日の休息時間

トラックドライバーが1日に取るべき休息時間として、業務終了から次の業務開始まで継続して11時間以上を与えるよう努めることが規定されています。また、最低でも9時間の休息を取ることが義務付けられています。

ただし、宿泊を伴う長距離貨物運送(走行距離450km以上)である場合は、週2回まで休息時間を「継続8時間以上」とすることが例外として新設されました。

この改正により、ドライバーが安全運転に専念できるよう配慮されています。

拘束時間

改正された改善基準告示によって、トラックドライバーの拘束時間は以下のように定められています。

<1年の拘束時間>
原則:3,300時間以内
例外:労使協定を締結し、以下の条件を満たせば、3,400時間以内まで延長可能
①1ヶ月の拘束時間が284時間を超過する月が連続3ヶ月を超えない
②1ヶ月の時間外及び休日労働時間が100時間未満になるように努める
<1ヶ月の拘束時間>
原則:284時間以内
例外:労使協定を締結し、年間の拘束時間が3,400時間以内であれば、年6ヶ月までは月310時間まで延長可能
<1日の拘束時間>
原則:13時間以内、上限15時間まで。ただし、14時間を超える回数は週2回までが目安
例外:宿泊が必要な長距離貨物運送の場合、16時間(週2回)まで延長可能
「改善基準告示」の対象になる条件

改善基準告示の対象となるためには、運送業務が労働全体の50%以上を占めることが条件です。そのため、事務作業や営業活動が主な業務で、運送業務が全体の半分を下回る場合は対象外となる可能性があります。

また、運送業務が労働契約上の主な業務となっていなくとも、実際に業務が運送中心になっている場合は改善基準告示の対象になる点も押さえておきましょう。

改善基準告示を無視した労働はどうなるのですか?
ドライバーに改善基準告示を無視した労働をさせると、事業者は行政処分を受ける可能性があるため十分に注意してください。直接的な罰則規定はありませんが、労働基準監督署の指導により違反が認められると、事業者が調査・指導の対象になります。ドライバー個人に対しても、過労運転禁止に違反すると、罰則が科される可能性があるため注意が必要です。

トラックドライバーの働き方が変わった理由

トラックドライバーの働き方が見直されることになった理由の一つとして、長時間労働の常態化に伴う身体的負担や過労死の増加が挙げられます。

トラックドライバーは、通常の運送業務に加えて、荷物の積み下ろしを含む付帯労働や荷待ちにより長時間労働をせざるを得ないケースが多く、それが健康被害の原因となっていました。

こうしたトラックドライバーの過労によるリスクを軽減するために、働き方改革関連法や改善基準告示の改正が重ねられ、労働時間や休息時間の管理が徹底されるようになったのです。

改善基準告示の対象になる車両

改善基準告示はすべての車両に適用されるわけでなく、対象となる車両が規定されています。その対象となるのは、トラックをはじめとする運送目的の車両です。

運送業務に使用される車両には、送迎バスや販売業務で使用される社用車なども含まれます。

また、対象となる車両は、営業用か自家用かによって区別されるわけではありません。自家用車を使用した白ナンバーのトラックも改善基準告示の対象になるため注意してください。

対象外となる事業用車

改善基準告示の対象外となる事業用車もあります。例えば、バイク便やタクシーなどの車両には適用されません。

ただし、改善基準告示の対象になっていなくとも、労働基準法にもとづく基本的な労働条件は遵守する義務があるため注意しましょう。

改善基準告示の対象と対象外の車両を正しく把握し、それぞれの基準に応じた労務管理を行うことが事業者には求められます。

白ナンバー・緑ナンバー・黒ナンバーの違い

白ナンバー・緑ナンバー・黒ナンバーの違い
車両のナンバープレートには、自家用車両に割り当てられる白ナンバーのほかに、緑ナンバーや黒ナンバーがあります。

しかし、ナンバープレートの色に種類があることは知っていても、それぞれの違いについてよくわからないという方も多いかもしれません。

ここでは、白・緑・黒のナンバープレートの違いについて具体的に解説します。

白ナンバーとは?

白ナンバーは、自家用車に付けられるナンバープレートであり、原則的には営業活動以外の目的で使用される車両に対して適用されます。

白ナンバーの代表的な車両は、個人のマイカーや通勤用車両で、企業が自社の商品を配達する際に用いられる車両にも白ナンバーが適用されます。

緑ナンバーとは?

緑ナンバーは、営業を目的とした事業用車両に割り当てられるナンバープレートです。運送や旅客業を行う車両がこれにあたり、緑ナンバーが付いた車両には、タクシーやバス、トラックなどが挙げられます。

また、緑ナンバーを取得するためには運輸局からの許可が必要で、運賃や労働条件など、法令で規定された要件を満たす必要があることも重要です。

緑ナンバーを取得する条件は、5人以上のドライバーが在籍していることや、事務所と休憩室を有することなど多岐にわたり、取得までのステップは簡単ではありません。

黒ナンバーとは?

軽貨物運送事業者が営業目的で使用する車両には、黒いプレートに黄色文字のナンバープレートが割り振られます。主に軽トラックや軽バンがこれに該当し、個人事業主が宅配や小規模な運送業務を行う際に使用されることが多いでしょう。

なお、個人事業主として軽配送業を行うためには黒ナンバーの取得が必要です。黒ナンバーも緑ナンバーと同様、取得には運輸局への届出が必要ですが、比較的簡単な手続きで取れます。

白ナンバーの車で荷物を運ぶのは違法ですか?
自家用車に割り当てられる白ナンバーで荷物を運ぶことが違法になるか否かは、荷物の種類によります。
白ナンバーの車両で運ぶことが許可されているのは、自社の荷物を運ぶ場合に限られるため注意が必要です。他社の荷物を有償で運ぶ場合には、緑ナンバーや黒ナンバーの車両を使用しなければなりません。

「改善基準告示」上で特例が許されるケース

「改善基準告示」上で特例が許されるケース
運送業界の業務形態や労働条件は多様で、一般的な労働時間と同一の管理基準を適用するだけでは対処しきれません。そのため、改善基準告示には様々な特例が認められています。

ここでは、改善基準告示上で特例が許可されるケースについて、それぞれ詳しく見ていきましょう。

規定の休息時間を与えるのが困難な場合

やむを得ない理由により、連続9時間以上の休息を与えるのが難しいケースでは、分割休息特例が適用されます。

ただし、この特例が適用されるのは、以下の条件を満たした場合限定です。

  • 休息を分割する場合、1回あたりの休息時間は連続3時間以上
  • 休息を2分割する場合は合計10時間以上、3分割の場合は合計12時間以上
  • 3分割休息の日が連続しないよう努めること
  • 1ヶ月程度の期間で、分割休息の日が全勤務日数の2分の1を超えないこと
2人乗務体制の場合

1台の車両に2人以上乗務する場合には、最大拘束時間は20時間まで延長可能で、休息時間は4時間まで短縮可能です。ただし、車両内に十分な休息スペースがある場合に限定されます。

また、車両内に走行中も快適に休息可能なベッド(長さ198cm以上、幅80cm以上)が設置されている場合、拘束時間を24時間まで延長可能です。さらに、仮眠を8時間以上与えれば、28時間まで拘束時間を延ばせます。

隔日勤務の場合

隔日勤務とは、勤務日と翌日の休息日を1セットとして繰り返す勤務形態です。

改善基準告示では、この隔日勤務に関する特例が設けられています。ただし、隔日勤務特例が認められるのは、業務の必要上やむを得ない場合限定です。

この特例では、2暦日(日付に基づく2日間)の拘束時間が21時間を超えないことと規定されています。つまり、1日の拘束時間が長くなる代わりに、その翌日を休息日とすることで労働の総時間を調整するということです。

フェリー乗船時間がある場合

車両ごとフェリーに乗船して移動する場合、フェリーに乗っている時間を休息時間としてカウントすることが認められます。

また、フェリーに乗っている時間が8時間を超える場合、フェリー下船時刻が次の勤務開始時間となるのが原則です。

予期しないトラブルが生じた場合

一般的に予想できない事象が発生し、規定の休息時間を与えられない場合には、特例が適用されます。

特例が認められる具体的な事由は、以下のようなものです。

  • 予期せず運転中の車両が故障した場合
  • 災害や事故が原因で道路が渋滞もしくは封鎖された場合
  • 警報を伴う異常気象により、正常な運行が困難である場合

上記のような事情で遅延が発生すると、その対応に要した時間を、拘束時間や運転時間から除外できます。

荷主企業に無茶な要求をされた場合はどうしたらいいですか?
荷主企業に無茶な要求をされた場合には、「荷主勧告」を発動できます。荷主勧告制度は、トラック運送事業者が犯した違反行為が荷主の関与によるものであった場合に、国土交通省が荷主企業に是正措置を勧告できる制度です。荷主勧告制度を適切に利用することで、ドライバーの労働環境を守ることにつながります。

まとめ

①2024年問題は白ナンバートラックにも影響がある
②トラックドライバーは過酷な労働や付帯作業、長時間の荷待ちなどの問題を抱えている
③改善基準告示には拘束時間や休息時間に関する新たな規定が追加されている
④改善基準告示にはいくつかの特例が認められている
⑤荷主企業から過度な要求をされた場合は荷主勧告制度が利用可能

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グーネット定額乗りマガジン編集部
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