転職をしたり、引越をしたりした際、住民税の支払いが滞ってしまうなど、ふとしたところで税金の未納は起こり得ます。

うっかり忘れていて、税金が未納になっていた場合、差し押さえになるのでは?と不安になるかもしれません。

この記事では、税金の未納が続いた場合、差し押さえになるのは本当なのか、延滞が発生した場合の信用情報は残ってしまうのかなどについて解説します。

税金を納めなければ差し押さえになる

税金を滞納し未納が続いた場合、税務署から督促状が届きます。督促状を無視して税金を納めないでいると、税務局に法律上、差し押さえの権利が発生するため注意が必要です。

差し押さえの対象となるのは、不動産や自動車など滞納者に帰属する財産です。差し押さえられた財産は売却され、未払い分の税金に充てられます。

給与は手取り額の4分の1が差し押さえ対象です。

税金の未納から差し押さえまでの流れ

税金の未納から差し押さえまでの流れ
税金を滞納しても、すぐに差し押さえになるわけではありません。行政には、税金の未納が発生してから差し押さえになるまでの手順があります。

差し押さえは、行政にとっても未納の対処として最終手段です。納税できない場合、早めに適切な処置をとれば差し押さえになることはありません。

ここからは、税金の未納から差し押さえまでの流れを紹介していきます。

1.督促状が届く

税金を提示された期日までに払えなかった場合、まず納付期限の翌日から延滞税が発生します。その後、納付期限から20日以内に督促状が届きます。

期限内に払えないことがあらかじめわかっているときは、その時点で役所に相談しましょう。税金の支払いに猶予をもらえたり、減税してもらえたり、何かしら対策を提案してくれます。

督促状が届いてからでも遅くはないため、気付いたら早めに役所に相談するのがおすすめです。

督促状が届いた後、地域によっては滞納者の支払いの意志を確認するため、さらに勧告を行う場合があります。勧告は電話や訪問などで実施されます。

2.財産調査が入る

督促状が届いても滞納者の支払い意志がみられなければ、差し押さえに向けて財産調査を行います。

差し押さえの前に、差し押さえできる財産が滞納者にあるかどうかを確認する目的です。

財産調査を行うために、税務署は「質問検査権」と「捜索権」の2つの権利が与えられています。

「質問検査権」は口頭や書類でする任意の調査です。この質問をする相手は滞納者本人だけに限らず、会社や取引先、金融機関なども対象になります。任意といっても、正当な理由なしに拒否すると罰金が科されることがあるため、安易に拒否はできません。

「捜索権」は、滞納者の自宅や会社に訪問し、実際に財産の内容を確認する権利です。捜索権が行使される場合は強制となるため、滞納者は拒否できません。

3.財産の差し押さえ

差し押さえられる財産は、不動産、預貯金や給与債権、自動車などの動産が対象です。ブランド品や貴金属類も差し押さえられます。

不動産は特に財産的価値が高いとみなされ、役所は不動産の所在を特定できれば、すぐに差し押さえられます。

逆に、債務者の生活に必要な衣類、家具、建具などは差し押さえられる財産の対象ではありません。現金も66万円未満、国民年金や厚生年金、生活保護、児童手当の受給権も差し押さえ不可能です。

滞納者が最低限生活を立て直せるものは手元に残されるようになっています。

4.財産の換価

自動車や時計などの動産と、土地や建物などの不動産は「公売」により換価されます。

「公売」とは、税金未納者から差し押さえた財産を入札などで売却し、滞納分の税金に充てる制度のことです。

これらの財産は購入者にも差し押さえられたものだと分かるため、あまり高額で売られることはありません。

給与や預金、生命保険などの債権は「取立て」によって換価され、税金に充当します。生命保険に関しては、強制的に解約し、解約返戻金の請求権を差し押さえることもあります。

自宅にいなければ差し押さえは執行されませんか?
まず、基本的に家に訪問して差し押さえることはありません。財産調査もたいていの場合が書類での質疑応答となり、差し押さえまでの過程を全て無視していたとしても、裁判所から職場や銀行に差し押さえの通達が届き、滞納者の見えないところで差し押さえは始まります。
不動産の場合も競売開始決定通知が届き、競売にかけられてしまうと落札者に不動産を引き渡すことになります。そのため、自宅にいなければ差し押さえが執行されないわけではありません。

税金を支払えない場合はどうする?

税金を支払えない場合はどうする?
税金の未納が発生してから差し押さえに至るまでに、どうにか対策をしたいものですが、すぐには未納分を支払えないこともあるでしょう。

滞納者が支払えない場合でも、滞納者に「支払いをする意志」が見られればすぐに差し押さえられることはありません。

ここからは、税金を支払えない場合の対応策について紹介していきます。

徴税猶予を活用する

以下の事柄が原因で税金を支払いできない場合は、「徴税猶予」といって支払期限の猶予を1年以内に変更し、納付できるように計画を作成します。

  • 災害や盗難により財産の大きな損失があった場合
  • 本人や家族に病気や怪我があった場合
  • 事業を廃止または休止した場合
  • 事業に大きな損失があった場合

徴収猶予が認められた際は、期間中の延滞金の全てまたは一部が免除されます。

猶予される金額が100万円以上であり、猶予期間が4か月以上の場合は原則担保が必要です。担保として提供できるのは、上場株式などの証券、土地などです。

場合によっては換価対応も可能

どうしても税金が支払えない場合は、税務署に申請して財産の換価対応も可能です。換価対応は価値のある財産を売却して税金を納める方法です。

なお、換価対応は税金を納付することにより、事業や生活の維持が困難になる恐れがあると認められた場合、差し押さえ財産の換価が猶予される制度もあります。

換価の猶予の条件には、「滞納者が納税について誠実な意思を有する」と認められることも必要です。また、滞納者から納期限から6ヶ月以内に換価の猶予の申請書が提出されなければなりません。そのため、なるべく早く申請する必要があります。

換価の猶予も基本的には1年で、申請者の財産や収入に応じて最速で支払い終える期間が設定され、猶予期間中は延滞金の全てまたは一部が免除されます。

家族の助けを受ける

徴税猶予や換価の猶予を活用できない場合は、延滞金が発生するため、分割で支払うにしても金額は元よりも大きくなってしまいます。滞納者の負担も大きくなるため、なるべく早く完済する必要があります。

家族や周囲の助けを借りることも視野に入れましょう。ただし、家族の私物が差し押さえられないからといって、差し押さえ前に財産の名義を家族に変える行為は「財産隠し」に当たります。刑事罰対象になる恐れがあるため注意が必要です。

同居している家族の支払能力が疑わしいときは、不動産などの購入時に名義を分けて購入しておくことがおすすめです。

税金を払えなくても信用情報に影響はない?

税金を払えなくても信用情報に影響はない?
税金を支払えないときはもちろん、差し押さえが行われるとなると、信用情報に影響があるのか不安になる人が多いでしょう。

一般的に差し押さえというとクレジットカードの発行が難しくなるなどの問題が起こる印象がありますが、実際には、税金の未納や差し押さえが信用情報にどのような影響があるのかについて解説していきます。

信用情報への影響は少ない

実は税金未納による差し押さえは信用情報への影響が少ないと言われています。

預金口座の記録情報は共有制度がありません。そのため、クレジットカード会社や他の金融機関などに、差し押さえられた口座の金融機関から記録が伝わることは起きません。

ローンを組む際や新しくクレジットカードを作る際は、差し押さえた記録のない金融機関の口座を使用すれば審査には影響がないでしょう。

差し押さえはクレジットカードでなく銀行口座

差し押さえは預金や給与に対して行うため、銀行口座が対象であり、クレジットカードは関係ありません。

クレジットカードの支払いやカードローンの支払いを滞納した場合は、信用情報機関に遅延情報として記録されます。そうなると、完済から5年程は情報が残ってしまいます。

しかし税金の滞納の場合、クレジットカードは差し押さえられないため、信用情報機関に情報が伝わることはありません。信用情報機関に情報がいかなければ、住宅ローンなどにも影響がないでしょう。

信用情報について

信用情報とは、信用情報機関に加盟するクレジット会社や金融機関から登録される情報です。

情報の内容は金融機関やクレジット会社との取引の記録のみで、個人の人種や思想、犯罪履歴などは含まれません。

取引の記録とは、ローン申し込み時やクレジットカード使用時の住所や電話番号などの個人情報、購入予定商品や支払い予定額などのことを指します。

クレジットカード情報の場合は、これらの情報に加えて支払い状況や遅延の有無、カードローンに関する情報なども含みます。

情報の保有期間は、情報機関や情報の内容によって様々ですが、ローンの申込内容に関しては1年未満、クレジット情報に関しては5年程度が一般的です。

ブラックリストと信用情報は同じですか?
ブラックリストと信用情報は同じではありませんが、同じような意味合いで認識している人が多いでしょう。しかし、「ブラックリスト」というものはそもそも存在せず、先述したように信用情報の中にクレジットカードやローン申し込み時の取引情報が登録されています。ローン審査やクレジットカード作成時に不利になり得る情報がある、という意味ではブラックリストの概念と信用情報は似ていますが、そういった情報がある人だけをリストにしたものは存在しません。

信用情報を扱う3つの機関

信用情報を扱う3つの機関
日本には信用情報を扱う情報機関が3つあります。各機関によって加盟している団体や金融機関が違うため、機関に登録されている情報の内容も違います。

情報機関にある自分の情報を「信用情報開示」といって開示請求することも可能です。カードやローンの審査が通らなかった場合、情報開示を行って自分の情報を知っておくのも良いでしょう。

ここからは、信用情報を扱う3つの機関をそれぞれ紹介していきます。

CIC

CICはクレジット会社の共同出資により設立された情報機関です。3社の中で最も保有している情報量が多く、クレジット会社や消費者金融、保険会社などが加盟しています。

クレジット会社は特に多く、クレジットカードの利用履歴を調べたい人はCICに問い合わせると確実です。

情報開示は郵送や窓口だけでなくインターネットでも行っています。

JICCとは「FINE」という相互交流ネットワークを使い情報をシェアし合っているため、情報自体はJICCとさほど違いはありません。

JICC

消費者金融が中心となって設立した信用情報機関です。そのため、加盟団体はほとんどが消費者金融や銀行などの金融機関です。

他の2社と違い、個人再生と任意整理の情報も保有しています。過去に債務整理を行ったことがある人は、JICCに情報が残っている可能性があるため、ローンの審査時は注意が必要です。

また、JICCでは過去に利用した消費者金融などの情報も調べられます。スマートフォンの公式アプリから情報開示請求ができるため便利です。

JICC、CIC、KSCの3社は過剰貸し付けや多重債務を防止するために「CRIN」というネットワークを使って情報交換を行っています。

KSC

KSCは全国銀行協会によって設立された情報機関です。KSCにはネット銀行からメガバンク、信用金庫までありとあらゆる銀行が加盟しています。クレジットカード会社や消費者金融は加盟していません。

銀行のローンに関する情報を知りたい場合は、KSCに問い合わせてみましょう。また、日本学生支援機構の融資に関する情報も保有しています。奨学金に関する情報が知りたい人も、KSCに問い合わせるとよいでしょう。

KSCも情報開示はインターネットと郵送で行っており、窓口がないのが特徴です。

信用情報に傷がつくと起こること

信用情報に傷がつくと起こること
クレジットカードやローンの支払いの遅延が発生したり、遅延が繰り返された場合、信用情報には「異動」という記録が残ります。支払いを期日通りに行えない人として信用を失い、信用情報に傷が付いてしまいます。

この情報保有期間は、遅延の解消や完済後、大抵5年はかかります。

ここからは、信用情報に傷が付いてしまった場合、解決してからさらに5年程度の間、何ができなくなるのか、どのようなことで困るのかについて解説していきます。

カーローンを組めなくなる

信用情報に傷が付くと、住宅ローンが組めなくなる印象がある人は多いでしょう。

身近なローンとしては、カーローンも同様です。住宅よりは低額のローンにはなりますが、信用情報に傷がつくとカーローンは組めません。

車の購入を検討している場合は、信用情報の記録が消えるのを待つか、現金で一括購入をする必要があります。

通常のカーローンよりも高金利ですが、完済まで名義をディーラーにするディーラーローンは、比較的審査に通りやすいといわれており、審査結果も早く出るため、どうしてもローンを組みたい場合は、一度審査してみるのもおすすめです。

携帯の分割払いができなくなる

携帯電話やスマートフォンの分割払いもローンに含まれるため、信用情報に傷が付くと利用できなくなります。

携帯電話は急な故障のおそれがあり、購入のタイミングが掴みにくいものです。滞納や支払遅延経験がある場合は、携帯電話を一括で購入できる資金を貯めておく方が良いでしょう。

携帯電話の分割支払いは、本体の購入時に利用するため、本体を中古品などで費用を抑えて一括で購入する方法もあります。

また、携帯電話の分割払いの滞納も3ヶ月以上続くと信用情報機関に登録されてしまうため要注意です。

クレジットカードを持てなくなる

信用情報機関に傷が付いた場合の一番の困りごとは、クレジットカードを持てなくなることでしょう。

特に差し押さえをされた場合には、財産も金銭も手放すことになるためクレジットカードを持っておきたいものですが、このときに信用情報に傷が付いていると、クレジットカードの発行ができません。

クレジットカードの審査に落ちた場合、信用情報機関に申し込み記録が残り、カードの発行記録がつきません。そのため、審査に落ちたことが情報を確認した会社に分かってしまいます。

過去の審査に落ちた記録もまたクレジットカードの発行を阻むため、審査に落ちた場合は半年から1年ほど新しいクレジットカードの発行を待つことになります。

信用情報機関に開示請求をした場合も信用情報に傷が付きますか?
信用情報機関に開示請求しても、情報照会記録は残りますが、ローンやクレジットカードの審査に影響はありません。債権者に情報開示を申し込んだことが知られることもありません。どの信用情報機関も、情報開示した情報を加盟店に知らせることはないため、自分の情報が気になる人やこれからローンを検討している人は一度、情報開示を申し込んでみましょう。

まとめ

①税金未納による差し押さえには流れがあり、未納分の支払い意志があれば差し押さえまでの間に対処することが可能
②税金未納による差し押さえは預金口座に対して行い、預金口座の差し押さえ情報についての共有制度がないため信用情報には影響を与えない
③信用情報は主に3つの機関が保有しており、それぞれの機関で加盟団体や保有している情報が違う
④クレジットカードの支払いやスマートフォンの分割支払いなどの遅延や滞納は信用情報に傷が付く
⑤信用情報に傷が付くと各種ローンを組めなくなり不便なため、注意が必要

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グーネット定額乗りマガジン編集部
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